インターネットの普及により、現在はパソコンさえあれば誰でも簡単に各旅行代理店の旅行ツアーの価格を比較したり、あるいは自ら航空券やホテルの予約をしたり、気軽に旅に出られるようになりました。そのため消費者たちはより賢い選択をしようと常に奮闘しています。私もその一人です。ミシガン在住2年目に入ったところで、縁があって、旅行代理店IACEデトロイト支店の支店長田中拓也さんと知り合うことが出来ました。思わず「何か情報を教えてもらいましょう!」と思い、早速、遠慮せずに「インタビューさせていただけませんか?」と頼んだら、快諾してくださいました。
旅行代理店IACE デトロイト支店
43155 Main St, Suite 2318, Novi, Michigan, 48375
X: Xuena、T:田中さん
X:単刀直入に聞きますが、旅行を安くする方法ってありますか?
T:まず、エアチケットを安く手に入れるのが一番ではないですか。例えば、米国の国内個人旅行は、基本的にエアチケット、ホテル、レンタカーが関わってきますね。でも、一番の割合はエアチケット料金でしょう。ホテルやレンタカーを安くしてもらっても、金額的には小さいです。日曜日を跨いで往復エアチケットを予約すると、大体安く買えますね。ケースバイケースですが、簡単に100ドルぐらい安くなるので、大きいですよ。
X:勉強になります~~。しかし、まったく同じ便でも、会社によって、かなり金額が違うこともありますね。それはどうしてですか?
T:もちろん、各社の契約内容が違うので、仕入れ値が違ってきます。たとえ仕入れ値が同じでも、それからの上乗せ料金がまた各社は違うので、なかなか同一料金にならないです。丹念に調べることですね。
X:私は日本に居る間にIACEで航空券を頼んだことが何回かありますが、残念ながら、渡米してからまだ一度も利用したことがありません。御社って、アメリカでも料金は安いほうですか?(やや失礼な聞き方ですね・・・)
T:お世話になりました!うちの会社、実際はほかの日系旅行代理店と違って、元々、アメリカ生まれの会社です。
X:ええ~~、びっくりです!日本の会社ではないのですか?!
T:IACEとはInternational Association for Cultural Exchange(国際文化交流協会)の略です。1970年にアメリカ人がニューヨークで本社を開設して、ニューヨークを拠点とする日米間航空券販売を開始したのがきっかけです。そして40年前に、メンバーの一人が日本へ戻って、同じ社名を使って、東京で会社を立ち上げたんです。
X:つまり、社名が同じでも、まったく違う会社ということですか?
T:そういうことです。でも、5年前に、日本のIACEがアメリカのIACEを買収して、完全に子会社にしたんです。ですから、デトロイト支店は、元々のベースが米国内にあるので、航空券を安く売ることが出来るというのは、うちの強みですね。
X:失礼ですが、御社の顧客はアメリカ人が一番多いですか?
T:いいえ、アメリカ生まれの会社ですが、日本人をメインターゲットにしてきたので、あんまりアメリカ人に知られてないと思いますよ。今でも、日本からの進出企業がメイン顧客です。また、北米をベースにして、メキシコ、香港を含めて海外支店は24店舗もありますが、海外勤務地のスタッフの95%前後が日本人です。日本人のお客様に対して、日本人スタッフで対応するのがベストではないかと思います。
X:それでは、ほかの日系旅行代理店、例えばJTBや日通などとは競合していますよね。
T:当然、お客様でバッティングすることがあります。ただし、それぞれの強みと得意分野があるのでね。JTBとAmnetはビジネス向け、一般向けの航空券手配、そして観光ツアーの両方をやっているが、日通、NISSINとIACEは、ビジネス向けの航空券手配がデトロイトではメインです。ミシガン州と近隣地域限定で見ると、この5社のうち、JTBとAmnetはシカゴ支店となり、デトロイト地区に支店を構えているのは日通、NISSINとIACEとなりますが、デトロイト地区なら、うちの支店が一番です。また、アメリカ生まれの会社だから、歴史も長く、顧客ベースが他社より厚いのではないかと思います。
X:あら、激戦区ですね。
T:でも、協力し合うこともありますよ。例えば、他社の観光ツアーも代理販売しています。
X:ああ、だから、店頭にJTBさんのパンフレットも置いてあるわけですね。
T:そうです。必要であれば、お客様のニーズに合わせて他社の企画商品を薦めることもあります。我々のところで客様のご要望にぴったり合うような企画商品を提供できない場合、せめて違う形でお客様をサポートする窓口になれればよいと考えています。業界内の連携業務によって、お客様により満足度の高いサービスが提供できれば、何よりだと思っています。
X:率直な話、一番の競合相手はどこでしょうか?
T:IACEのウリは格安航空券なので、よく価額競争をしているのはAmnet社ですね。結構お互いに売値を綿密にチェックしています(笑)。
X:それでも、最近の航空券の値段は結構高いじゃないですか?
T:デトロイト地区の自動車産業の景気がいいですからね。うちのお客様は7割ぐらいが自動車関係でしょう。飛行機での出張が多く、需要は高いので、値段が落ちないですね。デルタしか飛んでないローカル路線なら、国際線並みの料金になっているケースも珍しくないですよ。
X:何とか安くする方法ってないですか?
T:先ほど紹介した「日曜を挟む規則」以外、「経由規則」もあります。つまり、直行便は高いので、わざわざ遠回りしてどこか経由して飛んだほうが経済的です。片道だけでも、どこか経由すれば、料金が大分変わってきますよ。直行より面倒なだけではなく、時間はかなり無駄になりますが・・・
X:でも、いい参考になりますね。話は変わりますが、御社のパンフレットに「Welcome to Okinawa Youth Exchange Program」という企画を見つけました。それはどういうプログラムか、紹介していただけますか?
T:それは「沖縄青少年プログラムですね」。今年で10年目になります。我々は旅行代理店ですが、単なる観光というサービスを提供するだけではなく、旅行者に旅先の文化や社会をもっと知って頂くという責任も背負っています。感受性豊かな若い世代、特に高校生たちが、沖縄で現地の同世代と交流を深めることを通して、将来の日・米における架け橋の一員として成長していくのをお手伝いしています。おかげさまで、参加者からなかなかいい評判を頂いています。
X:社名そのものですね(笑)。最後ですが、個人的にクルーズに大変興味があるので、それに関して何か教えていただけませんか?
T:船会社との契約は各社で違うし、船会社はまたそれぞれに船を持って、航路も独自に決めています。各旅行社は専門者が担当するクルーズ課があるので、そちらに問い合わせたほうがいいでしょう。時間的な余裕さえあれば、船旅は一番お得だと思います。イベントをたくさん盛り込んだ「動くリゾートホテル」ですからね。米国発なら、カリブ海方面はいかがですか?世界で一番きれいなビーチがありますよ。
X:お薦めの時期はありますか?
T:雨季やハリケーンシーズンなどを避けたほうがいいでしょう。そして、クルーズツアーの販売に関しては、アメリカではお客様の問い合わせに対して随時料金を提示する形になりますが、日本は予めある程度の人数を想定したうえで料金を設定してマーケットに売り出します。なので、募集人数が足りない場合、安売りすることもあります。不定期ですが、それを狙うべきですね。
X:そのクルーズツアーの安売り情報はどこから入手できますか?
T:「http://www.iace.co.jp/cruise/」からIACEの日本側のサイトで見つけることが出来ると思います。米国在住なら、ビザや国際航空券の手配とは関係ないので、締め切り時間ギリギリでも申し込めるのが強みです。あとは、根気よくこまめにクルーズ課に問い合わせするのも一つの手ですが・・・
グローバル化、IT化に伴い、旅行の個性化・多様化・個人化がますます進み、旅行業界はその対応にも追われていて、混戦は避けられないでしょう。でも、消費者の立場にいる私たちは、それをgood newsだと思います。また、旅のキーワードは「非日常」です。日常からかけ離れるほどにその体験は心に深く刻まれます。皆さんもこれから、心の奥まで満たされる旅を数多く体験できるように祈ります。
Xuena