合衆国におけるJew(ユダヤ人)の人口は716万人である。うち、8万3200人(15位)がミシガンに住んでおり、そのほとんどがオークランドカウンティに住んでいる。ウエストブルームフィールドには多くのsynagogue(会堂)、templeがあり、ユダヤ教の祝日には、公立学校は休みになるほどである。KrogerなどのスーパーではKosherという売り場が当たり前のようにあるくらいである。勤勉で真面目な家庭が多く、ユダヤ教の戒律や規則に従って生活をしている彼らの「食」は、良い物であるに違いないという感じがするが、実際どのようなものなのか調べてみることにした。
Kahshrut (カシュルート:食物の清浄規定)
Kahshrutはヘブライ語で、合っている、正しい、適正なという意味がある、ユダヤ教の宗教法の一つで、ユダヤ教の戒律に則した清浄な食物を定める規定である。どんな食べ物を食べてよいのかいけないのか、他の食品と分けて保存しなければならない食品は何なのか、そしてそれらの食べ物は、どのように調理されるべきなのかなど、食についての遵守すべきことが細かく指定されている。そしてその基準に合った適正食品がKosherと呼ばれている。
ユダヤ教の聖書Tanakh(タナハ)の一部であるTorah (トーラ:モーセ5書、教え・指示の意味)には、食べて良いものいけないものの一覧が記述されており、それに従うものであるが、そこにはなぜ禁止されるのかは、はっきり書かれていない。
General Rules
Torahにおいて生き物の魂、「命は血の中にある」ということで血を食することを禁じている。これは、鳥類と哺乳類のみに適用され、魚類は含まれない。
自然に死んだ、もしくはほかの動物によって死んだ動物の肉、狩人が殺したものも禁止。
屠殺の際に病気を持っていたのも禁止されている。これもまた魚には当てはまらない。
●Shechitah --- Torahの規定に則した食肉用の動物屠殺方法
鳥類と哺乳類は一定の Kahshurtの戒律に沿って殺生されなければならない。Shochet (屠殺人) が喉元を鋭いナイフで素早く、深く痛みなく一瞬にして頸動脈を切り息の根をとめる。苦痛が最も少なく一番人道的な方法だ。血を残さずに取り去れるということでもよい。
●Kashering (血抜き)
殺生から72時間以内、冷凍もしくは、ひき肉状にする前に血抜きをする。解体されたものを室温の水に30分ほど漬ける。そして、粗い塩をまぶして一時間ほど置き血を抜く。
卵でも血のスポットがあったらそれはKosherではない卵となる。
Kosher (コシェル:適正食品)
●穀物・野菜・果物
土壌や植物、木、茂みに育つ物、野菜や果物は虫がついていない限りKosherである。
*カリフラワーやレタスなどは慎重に検査作業される
果物は植樹後3年目以降のもの。ブドウはジューイッシュ農家以外で作られたものは食せない。
●哺乳類---ひずめが分かれていて、反芻するもの“Cloven hooves” “Chew the cod”
〇牛、子牛、バイソン、羊、ヤギ、鹿 とそれらの乳で作られた牛乳、チーズ
×豚、イノシシ、ラクダ、バイソン、馬、犬、猫、鯨、ウサギ等
●鳥類
〇鶏、ギース、ダック(アヒル、鴨)、ウズラ、鶏卵、ウズラの卵
△ターキーはTorahの書かれた時期に存在したかが不明のため
×猛禽類(ワシ、鳶、鷹など)、フクロウ、カラス、ダチョウ、カモメ、白鳥
●水中生物---ひれや鱗のあるもの。
〇ツナ、サーモン、イワシ、マグロ、鯖、秋刀魚、鯛、鰤、その卵のイクラ、筋子、タラコ
×ウナギ、サメ、キャビア、ウニ、 ×軟体動物---イカ、タコ
×貝類---オイスター、エスカルゴ、 ×甲殻類---ロブスター、エビ、蟹
×両生類---カエル、 ×爬虫類---ワニ、カメ、
△昆虫---イナゴ、コオロギ、バッタ---折れ曲がる足があり跳ねる昆虫は〇
上記×印の卵や臓器も禁止
●Cholov Yisroel—ユダヤ人によって製造されたミルク
搾乳の時点から容器に入れる段階まで立ち会い製造の工程で、non-kosherのものが混じらないか確認する。チーズ、バタ―、ヨーグルトなど乳製品はcholov yisroelから製造される。
●Kosher ワイン―ユダヤ人が全ての工程を手掛けたワイン
植樹から4年目以降のブドウの収穫からボトル入れまで、材料も含めて、全てのワイン製造工程をユダヤ人の専門職人に管理されなければならない。加えて、ワインの取り扱い、飲む段階でもがダヤ人によって扱われなければならない。ユダヤ教においては偶像崇拝は禁止されているが、他の宗教においてはワインは聖なるもの(偶像崇拝)として扱われる。そのためワインは特にKosherであることが重要となる。
●Mevushal ワイン
KosherワインをMevushal(cooked, boiled)という74℃から90℃で熱処理する殺菌方法を用いて処理する。熱することで偶像崇拝の規制から外れ、non-Jew(偶像崇拝している人々例えばレストランのウエイターなど)が取り扱えるワインとなる。ユダヤ教の人がレストランや公的な場でワインを飲むためにMevushalワインがある訳だ。Kedem,
Manischewitzが代表的なメーカーである。
Separations
“You shall not boil a kid in it’s Mother’s milk” 出エジプト記23:19
- 鳥類と哺乳類の肉は乳製品と一緒に混ぜない、盛らない、食してはならない。
- 肉と魚は一緒に食べないし、同じ皿に盛らない。
- 肉類を食べた後に乳製品を摂取する場合は少なくとも1時間から6時間おかなくてはならない。(その逆で乳製品の後に肉類を食べるには時間を置く必要はない。)
- 魚、卵、野菜、穀物は肉とでも乳製品とでも食して構わない。
- 魚と乳製品は一緒に摂って良い。
- 卵と乳製品も一緒に取って良い
- 調理器具、鍋等は肉用(fieshig)と乳製品用(milchig)、Kosherで無い物用で分ける
Bishul Yisroel (cooking of Israel)
ユダヤ教の人が調理したものを食することと定めたものが、bishul Yisroel、対してユダヤ教でない人が調理したもので食してはいけない事を bishul akum(cooking of non-Jew)という。Bishul Yisroelでは、切る、炒める、揚げるなど基本的な調理法はユダヤ人が行う、とを定めているが、電子レンジの使用はその限りでは無いという。また、生の食材、加工されても味の変わらないもの(牛乳、水)、健康の為のものでない食品(チョコレート、飴、ポテトチップスなどのお菓子)を摂ることは規制されていない。もとは、異宗教間での結婚を避けるためのものという説がある。
Mashgiach (マシューギアハ:supervisor)
Kahshurtを監視するための専門職の人で、食品工場、肉屋、レストラン、ケータリング業者、ホテル、老人ホームなどにおり、製品とその製造工程を監視しhekhsher(ヘフシェール)という証書を発行するなど重要な役割を持っている。 shomer mitzvot、shomer kahshrut, shomer shabbat(後述参照)としてそれぞれの規律に通じていなければならない。
Shomer Shabbat(ショーマーシャバット:安息日を遵守する人)
ユダヤ教の戒律、mitzvotに則ってShabbat(安息日)を遵守する人。安息日は、神が天地創造の後7日目に休息をとったことを由来に、土曜日はいかなるMelacha(創造的なこと)も行ってはならないとしている、例えば、労働、筆記、運転、調理、買い物、電気の使用など広範囲に禁止される。
【まとめ】 今回はユダヤ教の人々の一旦を調べたわけだが、いかに深くユダヤ教が食生活のみならず全ての毎日関わっているかに驚異を感じた。ユダヤ教の聖書の一部Torah、
Jewish lawのhalakhah(ハーラー)、戒律のmitzvot (ミツワ―)と果てしなく読み続ける必要がありまだまだ不完全であるのが惜しい。ユダヤ教家庭では幼いころから時間を掛けてTorahを子供たちが学ぶと聞いていたが、このボリュームを知り納得である。宗教は人間の人格形成に大きな影響を及ぼすものだと改めて感じた。
(Mico☆I)